こんばんは,演出原画の田野です.
今日も制作部はおやすみなので,僕が更新します. 昨日は藤田さんが更新していましたが,投稿したときには日付がかわっていましたね.
いつもあんなに夜遅くまでやっていますので, 制作部にも,たまにはお休みがあっても良いと思うのです. 体を壊してしまいますからね(僕は関係なく制作を進めているんですが,いたわりの言葉とかはほとんど無いです)
前々作「森の奥停留場」の試作品でつかったレイアウトです.
まだレイアウト用紙の規格も決まっておらず, フレーム線が赤ペンで書き込んであります.
レイアウトから原画/美術を描きおこしますので, さながら画面の設計図のようなものです. (ちょっと前に解説しています「アニメを作る!原画のお仕事編」 http://blog.gorgonezola.com/2014/11/make-animation-1.html)
C87作品になってきますと,だいぶ洗練されてきています.
主にキャラクターの配置や,背景の詳細の指示が書き込まれています. 撮影に関しても備考があれば書き加えられますので, いわば全ての心臓部なのです.すべてがこれに従って進められていきます.
ですので,一度レイアウトを描いてしまうと, もうほとんどの場合で修正がききません.
レイアウトを描く前に,動作はあらかじめ考えてあります.
ですが,実際に動画/仕上げ/撮影を終えて, 「あー失敗したなあ」ということがほとんどなのです. もっとキャラクターの配置を大きくすれば良かった,とか.
しかし,もしもです. カットが上がってから「レイアウトを修正する」なんて言ってご覧なさい.
命を狙われます.(ガイコツ!!!脅迫ですか?!!)
現在スタジオゴルゴンゾーラでは, Live2Dモデルを制作に用いようと,導入試験が進んでいます.
その技術目標の一つに「カット完成後のリテイク」があります.
本来ならば,カットが完了したものはリテイクできません.
なにせほとんどの場合で「原画/動画」からやり直しだからです. 実質的に制作カットがひとつ増えることになってしまいます.
現在試験中の新制作工程では, モデルを使って先行して「レイアウト」「アニメーション」を作ってしまいます. ここが今回のミソです. (新工程は現在試験中ですが,現時点でも完成度は高いので, 近々お話しすることが出来ると思います)
たとえば冒頭のレイアウトは,新制作工程のものです.
モデルを使って画面構成しますと,すごく大きな利点があります.
モデルを使う利点① まずカラーで出力される!! レイアウトは基本的に着色されませんので,モノクロ(と色鉛筆数色)であげられます. カラーで無くとも不便は感じないのですが,やはりカラーの方が「完成映像に近い」ものになりますので,その後のなどがやりやすくなります. 美術も描きやすいですし,良いことずくめです. (今までは仕上げを待たないとカラーにはなりませんでした)
ちょっとカメラを寄せましょうか.
こんな事まず出来ませんでした.
モデルを使う利点② 簡単にカメラ位置を修正できる!! 「あーしまった!もっとカメラ近くだ!!」といった場合,今まではレイアウトや原画ごと書き直す必要がありました. そんなに時間はかからないとはいえ,わずかな修正でもカットに手戻りが発生するため,制作進行的には大打撃です.(まだ制作進行いないんですけどね) レイアウトを簡単に修正できるのは素晴らしいことです.
先ほどのレイアウトにアニメーションを付けたものです.
先にモデルを使ってアニメーションを付けられますので, より完成度の高い設計図になっています.
モデルを使う利点③ 非常に早い段階で完成映像に近いものが得られる!! 今まではレイアウトと原画を描ききってから,始めて「原撮」に進みます. そこでようやく「そこそこ動く映像」が見られるのです. (詳しい解説があります「アニメをつくる! 取込/原撮編」 http://blog.gorgonezola.com/2014/11/make-animation-2.html)
この原撮は撮影工程を使うため, 他の撮影とバッティングすると不都合です.いろいろと制約もあります. しかもです,原撮映像を確認して「あ,やっぱだめだ」とか思うと最悪です. 位置から描き直しですから,大変体力が使われます. (一発で描ければいいんですけど)
動きを見てから,画面配置を修正することも出来ます.
とりあえず作ってみて,それを後から修正することが出来るのは素晴らしいことです. もしもレイアウト段階で新しいモデルが必要になっても, 既存のモデルでアニメーションを付けておけば,差し替えるだけで対応できます.
今はまだラインテスト中ですが, この新しい制作工程には,とても大きな手応えを感じています.
これでみんなハッピー!!!
にはなれません.残念ですが.
今回のこのラインテストのために,何体かモデルを増産しています. 制作準備段階では,少なくとも300体ほどのモデルが必要になる見積もりです.
前回の藤田さんの更新でも「テクスチャを作るのは大変骨が折れる」と 言っていました.
モデルごとに原画をおこして,セル/仕上げ/モデリングをします.
問題になるのは,数え切れないほどの「素材ファイル」をどう管理していくかです. 一難去ってまた一難といった感じで問題は続きます.
次回はこの「アセット管理」についてお話しします.
明日も休業日ですが,僕だけ頑張ります(涙)