どうも動画の田野です.
最近月曜日の更新をさぼっていましたが,さすがに怒られそうなので更新しておきます.
今日は先日の記事にあった「プリビズ(確認用映像)」までの制作について書いていこうと思います. 日曜日は頑張ったと言いましたが,一体なにを頑張ったのでしょうか?
- モデルのセットアップ
- モーフターゲットの作成
- 制作済みのプリビズ用モデルを統合
- 劇伴曲の打ち合わせと制作
- アクション・カメラワークの打ち合わせ
- アニメート
- 仮素材書き出し・編集
それではひとつずつ順を追ってみていくことにしましょう.
土曜日の時点で,モデリングは大方済んでいました. 今にも動き出しそうですが,残念ながらそうはいきません.
モデルにボーンを組み込み,さらにスキニングをすることでようやく動かすことができます. 今回は,体にはBiped(3ds Max組み込みのヒト型ボーンです)を用い,髪の毛はカスタムボーンをスプリングコントローラ組み込みで仕込むことにしました.
Bipedを作成し,すでにあるモデルに合うように配置していきます.
意外と面倒くさい作業です.足や腕は問題ないのですが,指になってくると細かい調整が多くなり,時間がかかります.かといって適当にしてしまうと,この後の作業が無駄になってしまうこともありますので,試練の段階です.
幸いにも,ミラーリングができますので,仕込むのは片方だけで十分です. (以前の記事もぜひご覧ください.少し古いですが)
さすがにこのままでは見にくいので,配置が終わったBipedは「オブジェクトプロパティ」から「ボックスで表示」オプションをONにしておきます. また,なぜか標準で「レンダリング可能」がONなので,こちらは切っておくことにしましょう.でないとレンダリング画像に変な影が映り込んでしまいますからね.
Bipedの配置が終わりました.うまく人物に沿って配置されていますね(そうかな?)
足の指の合ってない感じが,ひしひしと伝わってきますね. 予定ではこのキャラクターは靴を履きますので,これで問題ありません.
続けて髪の毛のカスタムボーンを作成します. これが一番大変でした.
今までのセットアップでもよくあったことですが,ボーンの作成時に「スケール」ツールを使ってボーンの長さを変更してはいけないようですね. 一見問題ないですが,ボーンをいざ動かしてみるとグルグル回転してしまいます.
一応ボーンツールからリセットすれば元に戻るはずなのですが,うまくいったためしはないので,素直にスケールを封印しておくことにします. (ボーンの回転問題は藤田さんのこの記事が詳しいです.)
今回作成したボーンは,オーソドックスなIKHIにスプリングを併用したものです.
藤田さんのカスタムボーンとは違い,素直にボーンを配置してそれぞれにIKHIを適用,ポイントヘルパを配置しました. ボーンの回転問題などはなく,すこぶる順調です.おそらくですが,今までのカスタムボーンではIKを適用した後にボーンを配置するなど,手順に問題があったように思えます.
ポイントヘルパの位置コントローラに「スプリング」を設定することで,髪の毛が揺れたりする動作を自動化しています.演算はすごく重いですが,手付けの手間を考えるとすごく楽です.
髪の毛のボーンも配置を終えました.すこし本数が不安ですが,ショートヘアなので大丈夫です.
あとは全身のオブジェクトにスキンを設定していくだけです. スキンの作業は端的に言うと「追従設定」なのですが,やはり全身になると時間がかかります.
既に設定が終わった状態です.このようにボーンの影響範囲を設定していくのがスキニングと呼ばれる作業です.
頂点数は少なくしてありますが,それでも時間がかかります. あらゆるポーズで破綻がなくなれば一番良いのですが,そうはいかないので8割を目安に進めていくことにします.
髪の毛や,顔などもスキンを設定していきます. これでセットアップは一通り完了です.次は表情をつける作業ですね.
モーフについて説明するべきこともありませんが,一応メモを加えておきます.
今までは参照を駆使した複雑なモーフシステムを使っていましたが,どうにも使い道がないのでシンプルな普通のモーフを使うことにしました.
モーファーはシンメトリの下に組み込んでいますので,表情は常に左右対称になります. 左右対称だと制作を進めるうえで不都合がありそうですが,そんなに左右非対称の表情を使おうと思うことはないのでそんなに問題はありません.
これで準備は整いました.次はプリビズ用の小物モデルを統合する作業です.
ここで無かったらプリビズできないところでした. 三浦さんが前もって作成していた武器のモデルを,合成して配置していきます.
もちろんただ配置しただけではモデルに追従しないので「リンクコンストレイント」をかけておくことにします.
コンストレイン先はBipedのルートで良いでしょう.位置も近いし,選択もしやすいし. ちなみにプリビズ中のモデルは武器を手に持っていますが,これもリンクコンストレイントです.
そのほかのコンストレイントは使わないのでよく知りませんが,たくさん種類がありますので,今度調べておくことにします.
基本的に同時並行で進む音響制作ですが,今回はアクションシーンということであらかじめ劇伴曲についても打ち合わせておきました.
プリビズの出力に間に合うように,ラフなイメージを曲に落とし込んでもらいます.だいたい8時間ちょっとの作業時間です.音があると無いのとでは,やはり違いますよね. (昨日の記事でも少し触れられていましたね)
おおまかなアクションのイメージを皆さんに伝え,実際にポーズをとりつつ,カットにまとめていきます.残念ながら写真を撮り忘れてしまいましたが,さながら劇団のリハーサルでした.
ホワイトボードに描き込んでいるのが,実際のカメラワークです. これらをもとにしてアニメーションを組み立てていきます.
アクションシーンということで,戦う相手が必要なのですが今回はBipedで代用しました.
アクションはオートキーでごりごり進めていきます.いろいろな映画のシーンを見たり,ゲームのモーションを参考にしたり,一番楽しい作業です.
今回はカットごとにモーションを作るのではなく,実写撮影のように一つのシークエンスを,複数台のカメラで撮ることにしました.
カットごとに新規でモーションを作るのも良いですが,今回は確認用の動画であるプレビズなので,できる限り簡単な方法を使います.カメラワークの試行錯誤もしたいですからね.
今回はすべてターゲットカメラを使います.フリーカメラでもよいですが,使い勝手が良いのはやはりターゲットカメラという印象です. この時点でステージも,イメージがつかめる程度に作っておきます.
前回の記事では編集後の映像だけをお見せしましたが,今回はこの各カメラで一体どのような映像を撮っていたのか見てみることにしましょう.
あとはそれぞれの映像を編集して,プリビズの完成です.
ここまでを一日で済ませたところに,頑張った要素があるわけです. これまでの説明を振り返ってみましょう.
- モデルのセットアップ
- モーフターゲットの作成
- 制作済みのプリビズ用モデルを統合
- 劇伴曲の打ち合わせと制作
- アクション・カメラワークの打ち合わせ
- アニメート
- 仮素材書き出し・編集
頑張りましたね. とても長い記事になりましたが,少しでも制作について知っていただければと思い書きました. 勝手に出来上がるものではなく,誰かが作るものだからこそ,その作り方を知るのは面白いですよね.
明日もほどほどに頑張ります.